Take me wherever you work: 連れてけ、出張

「連れてけ、出張」

出張

出張の都度、当時5歳くらいだった息子は切り紙をこしらえ、持たせてくれた。クライアントに用意してもらったホテルの客室にはその地区の風景があるが、大抵は部屋を出ると忘れるような眺めばかりだった。入室するなりカーテンを大きく開く。くじを引くような気分程度だが、稀に旅行冊子に使えそうな眺望に当たることもあった。

作品は息子が気まぐれに作った切紙を客室の窓に張り付けている。ホテルのマネージメントに沿って決定し与えられた眺めと切り紙を組み合わせて撮影するのだけども、眺望が良すぎると何だかしっくりこない。既視感の表出が写真の妙味なら、朝日に染まる宿泊客用の青空駐車場、喫煙にすら使われない雑居ビルの屋上、期せずに連なったマンション群に導かれ、何時かの心も浮き上がってくると思いシリーズとして纏めた。名付けようもない眺めに紐づいたその時の心は、名前がないがためにいつまでも残っている。

©ハレバレシャシン

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